◇はじめに
初夏の候、皆様におかれましてはますますご清祥のこととお喜び申しあげます。また、平素は格別のご高配を賜り、有り難うございます。
4月に、石井道夫先生の後任として校長に就任しました浜田と申します。長い歴史と伝統を有する土佐女子の発展のために全力を尽くして取り組む所存です。関係各位のご支援をよろしくお願いいたします。
◇名門土佐女子の歴史と遺産
本校は明治35年3月に設立された私立高知女学校と前年に開設された成女学舎との合併により、4月18日に私立土佐女学校として創立され、107年の歴史を誇る県内屈指の名門校です。翌36年には高知共立学校と合同して現在地に移転し、その後学校制度改変に伴い名称等の変更を経て、昭和26年土佐女子高等学校、土佐女子中学校に校名変更して現在に至っています。
明治30年代といえば、全国的には女子中等教育機関が発展を遂げた時期ですが、県内における女子中等教育機関は、県立高等女学校1校と私立4校(女子手芸伝習所、裁縫伝習所、宮内裁縫伝習所、高等実業学校)でした。その多くが手芸裁縫教育を目的とするもので、男子教育に比して女子教育が不振という状況の中で創立されています。
本校は、県立高等女学校と私立裁縫女学校との中間を進むものとして「極めて実用的にして且つ品位ある女子を養成する」ことを目的として教育を開始しましたが、翌年自由民権運動結社の流れをくむ共立学校と合併したことで、私立中等教育機関として発展することとなりました。特に、明治37年私立土佐高等女学校の設置認可によって、高等女学校令に準拠した学校へと昇格し、生徒数の増加や県費補助の増額等で財政基盤が安定しました。そうした中で一時県立移管問題が浮上しています。それに対し、第5代校長の中村雅持校長は「真個の教育は私学に行はる」という強い信念によって、私学での存続を決定しています。私学は公立校では満たされない県民の希望をかなえるものであり、男女の特性に沿った教育、男性依存に陥らない自主的能力を育成する必要性を唱え、私立女子校として、女子教育を継続するという方針を打ち出しています。これが現在に至るまで本校の教育理念として継承されており、教職員のモチベーションの高さにもつながっているように思います。
戦後、県立高等学校が伝統を打ち切る大改革を行ったのに対して、本校は伝統を受け継ぐ形で全県一区としての公募を行う6年制の中等学校を構想し、昭和23年、中学校を併設した高等学校へと転換しました。公立と異なる改革として、中学入試の実施により公立学校にない学力選抜を行うことで、学力を保障し進学校として発展・拡大させました。
最近では、公立高校が入試制度改革により学区制の撤廃や前後期選抜方法など自由化を進めており、私学はこれまでのように学力に特化した教育だけで生き残りをかけるのは難しくなっています。幸いにも、本校には、長い歴史と伝統による教育遺産があります。教育環境や交通便等立地条件も申し分ありません。そこで、建学精神を踏まえ私立女子教育の特色を前面に掲げ、教育内容の深化と部活動の発展や出口保障の徹底による学校経営を進めることによって、私学の雄として生徒や保護者の期待に応えたいと思います。
◇土佐女子教育の実践
本校は、封建社会の考えが色濃く残る明治時代にあって、一人の独立した人格を持つ女性として、自らの使命を認識し、倫理観を有し、胸をはって社会に出て行くことのできる女性を育成するという考えのもとに知徳体の精神を建学理念に掲げ、道徳心のある情操豊かな人間性を養ってきました。そうした中で、日常教育活動を通じて、質実、勤労、品位を重んじ、礼儀作法や静粛、清掃、公徳心などの良き伝統が学校の気風として築きあげられ、社会で活躍する多くの人材を輩出してきています。
そのような人間教育や校風は本校の最大の特色といえます。そして、教育の目的である人格を完成するために「知性」「自律」「豊かな心」という校訓を掲げ、「土佐女子教育」の実践を通じて明朗かつ聡明で、愛情豊かな気品ある女性を育成してまいります。
私は、教育は人づくりであり、その求めるものは「確かな学力」と「豊かな人間性」であると考えます。「知性」というのは「物事を知り、考え、判断する力」のことです。単なる「知識」ではなく、知識を活かすために働く力のことです。物事を理解する力、判断する力、推理する力を指します。その「知性」を身に付けるために、学校生活において常に問題意識をもって、自分で考える力を身に付ける必要があります。「なぜ」「どうして」と問題意識を持って授業に臨み、しっかり理解し、納得して知識を習得することをまずは体得させたいと考えています。そして、知識を定着させ、生かすために、家庭学習を習慣化させ、自分の頭で考えるということを常に行い、問題解決の道筋を明らかにする力を培いたいのです。
その「知性」と連動して大きな働きをするのが「自律」です。「他からの支配や制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動する」というのが自律です。知性により導きだした考えを行動に移すという「思考の行動化」によって、どんな困難な問題をも解決することができるようになります。それが「確かな学力」であり、本校ではその学力を育てようとしています。
それに加えて、美しいものを見て感動する心やいけないことに勇気をもって立ち向かう正義感、優しさや思いやりといった「豊かな心」は本校教育の要でもあります。「あいさつ」「環境美化」「履物をそろえる」という実践を通して「豊かな心」を育ててまいります。「おはよう」「こんにちは」「さようなら」「ありがとう」「ごめんなさい」という素晴らしい言葉を日常笑顔で自然に交し合えるというのは実に素敵なことです。
また、「良き環境には良き人が育つ」ように環境美化を徹底することによって、気配りや配慮ができる心を育ててまいります。掃除は、人の心を磨き人間として大きく成長させてくれます。環境を整えることや花を見て美しいと感じる気持ちなどを養うことは、制服の2本線(大きい線が親で小さい線が子ども)が意味するように、本校が大切にしている親から子へと代々引き継ぐべきものでもあり、そうした特色ある女子教育を一層推進することで、本校の存在意義を明確にして大いに発展させたいと考えています。
◇おわりに
現代社会が求めているものは、当たり前のことを当たり前のように行い、社会に貢献しようとする品格の備わった人間であり、それはまさに「知性」と「自律」「豊かな心」の育成を柱にすえた「土佐女子教育」によって行われる「人づくり」教育であるといえます。後援会や校友会の協力を得て、生徒や教職員たちの手でより良い学校づくりに邁進し、生徒が生き生きのびのびと活躍し、真の女性の輝きが際立つような豊かな心を育んでまいります。
日ごろの皆様のご理解やご支援が、私達に大きな勇気と自信を与えてくれていることを感謝しています。今後ともどうかよろしくお願い申しあげます。