◇支えられて
学生時代に放送部員だったこともあり、本校に着任し放送部の顧問となって三十年余りが経った。
顧問として初めての全国大会出場は昭和四十九年、広島県で開催されたNHK杯全国高等学校放送コンテストである。現在でこそ同コンテストは東京での開催だが、当時、会場は各都道府県持ち回りだった。その大会で谷岡理香さん(当時高三)が朗読部門で第三位という成績を修めたのだった。前年度には溝渕多津さんが朗読部門で第二位を受賞している。
その頃から本校放送部は多くの人に支えられて現在に至っている。
私が顧問としてまだ駆け出しの頃はNHK高知放送局の広越アナウンサーが熱心にご指導くださった。もちろんボランティアである。広越氏は第一回NHK杯全国高等学校放送コンテストの優勝者で、高校生に放送の魅力を伝えたいという強いお気持ちを持っていた。「私がしているのはきっかけ作り。ここで習ったことを今度は後輩たちに伝えてほしい」とよくおっしゃり、高知を離れることになると後任アナウンサーの方に指導を託してくださった。
広越氏の考えはその恩恵に浴した部員たちにも引き継がれた。例えば元RKCプロダクションの溝渕(現・中沢)多津さん、現在FM高知で活躍中の山岡アナウンサーなど、本校卒業後も後輩の活動を気にかけ、折に触れ指導してくれる。彼女たち「OG先生」がありがたいのは、その指導がアナウンスだけでなくマナーにも及ぶところだ。「マナー」と言っても受け取り方は様々で、成長するに従いその目的や重要性が実感できるようである。アナウンサー養成の専門学校に進学したある卒業生は「専門学校に行って、改めて高校時代に受けた指導の水準の高さや大切さが分かった」と言った。本校の重視する躾指導も「種まき」のようなものかもしれないと思ったことである。
◇活動の広がり・活動の喜び
現在、放送部はアナウンスだけでなく朗読や番組制作、各種イベントへの協力など、活動内容は多岐に渡っている。このように活動内容が広がった大きなきっかけは、昭和から平成への変わり目の高知県が主会場になった元年総体と、二〇〇二年の高知国体だったと記憶している。運動部を中心として、各部の活動が一層活発化したが、放送部も記念すべき両大会で総合開会式のアナウンスを担当し、その二つの波に乗った形であった。
活動が校外へも広がると嬉しい言葉を聞く機会も増える。特に一昨年度からはNHK大河ドラマ『功名が辻』の影響も大きかった。
「土佐女子の生徒さんのファンです。朗読やアナウンスがよく伝わってくるのは勿論ですが、皆さんの態度がいいですね。笑顔で会釈ができるし、下級生が上級生を心から応援している様子には心が温まります」
これは今年六月の高知県高等学校放送コンテスト終了後に、他校の顧問の先生からの言葉だ。大会成績だけでなく、態度が認められたことが嬉しい。
県大会を経て出場した全国大会(第五十二回NHK杯全国高等学校放送コンテストと第三十一回全国高等学校総合文化祭)では、成績は今一歩というところだったが、また嬉しいことがあった。
準々決勝を勝ち抜いた他校部員に、自身は敗退したのに「次、頑張ってね」と励ましの声をかける本校部員がいたのだ。高校生活最後の夏、勉強の時間を削り、迷いや重圧との板挟みにあって、「勝ちたい」という気持ちの強さは誰しも同じである。目標まで到達できず涙を流すのは当たり前だが、それをこらえての「頑張って」はなかなか言えるものではない。その優しさ、純粋さ、強さが周囲の人の心を打ったのだった。
中学生も負けてはいない。八月下旬に高知県立文学館で行われた小中学生「文学作品朗読コンクール」の予選会に中学三年生が三名出場した。六月下旬の部内選考会で選ばれた「精鋭」である。発声や滑舌などの基礎練習、登場人物の理解、地の文(会話以外の文)の読み方などを練習した。私も、上級生の真摯な取り組みを引き合いに出し、初舞台の三名を激励した。時間をかけて取り組むと徐々に自信もわいてくる。本番も堂々と楽しんで、それぞれが三分間の朗読を終えた。
閉会式後、生徒に声をかける一人の女性がいた。後で私にも声をかけてくださったその女性は、午前中に行われた小学生の部への参加児童を引率してきた先生で、中学校の予選を初めて聞き感激したのだと言う。
「土佐女子の生徒さんが朗読すると、その場面が目の前に浮かんで、ここがホールだということを忘れるほどでした」
最大級の賛辞を面映ゆい思いで受けたのだった。
◇何をどう伝えるか
本校生徒には「この子どもの能力を引き出してやろう」と他者に思わせる資質があるようだ。OG先生だけでなく他の方々にも、これまでに様々なご指導をいただいている。
そして、部員たちは「日本語を正確に伝え、聞くものに感動を与える」という作業の中で一人一人成長している。
しかし、部員自身の関わる「世界」が狭いと、この「伸び」が思うように得られない。
例えば、主に高校生が取り組むアナウンス部門の原稿は九十秒の自作、つまりオリジナル作品なのだが、その題材を見つけるのに四苦八苦している。題材は何も特別なものである必要はない。今までには、高知の文化、献血活動、友人の活躍などが取り上げられた。土佐弁の「ゆう」と「ちゅう」の違い、よさこい祭りの出場チーム「ほにや」、留学生との交流といった題材に注目した者もいた。どれも身近な話題だが、自分自身の思いを聞き手に伝えるまでには、何度も原稿を書き直し、癖のある読みを直す。この気長い作業が必要なのだ。
また、昼休みの校内に『オレンジタイム』という番組を放送するようになって久しいが、ここでも部員たちの「世界」が試される。この番組では約十分という時間の中で、一般生徒からのリクエスト曲を流したり、教職員へのインタヴューコーナーがあったりする。
そのインタヴューでも、会話をもう少しふくらませることはできないかと時々残念に思う。事前に用意した質問は滞りなくできるが、そこで得た答えを次の質問に活かせない。言葉のキャッチボールになっていないのだ。「単なる一問一答では、インタヴューする側もされる側も、その魅力が十分伝わらないよ」と先輩から指摘されて気づかされる。技術だけでなく、「教養」や「経験」や「感受性」も、アナウンスや朗読を生きたものにするのだ。
幸いなことに、放送部員はいつの時代もやる気十分。小学校の児童クラブ訪問、県立文学館での朗読劇、全国中学校体育大会でのアナウンスなど、いろいろなイベントに喜々として参加させていただいている。この秋も、「詩のボクシング全国大会」の出場者を応援する朗読に、部員二十二名が参加。かるぽーとの舞台に立つ。
私たち指導者側も、日常の授業や部活動、行事など、生徒たちの「世界」を広げる働きかけをしていかねばならない。生徒を通して私たちの姿勢も問われているのだと思う。