講師 山本 千賀(65回卒業生、開業医)
みなさん、こんにちは。学会発表以外で、これほど多くの方を前にお話するのは初めてです。そして今日の話が少しでもみなさんのお役に立てばと思います。 ◇情報の「量」と「質」 さて、本日私はみなさんとは「初めての御目文字です」。今、オメモジと言いました。これを聞いて、みなさんは、聞いたことない、聞いたことある、どんな字を書くかな、などと思ったでしょう?また、「私は土佐女子を卒業して四十年経ちました」。これを聞くと、高校卒業が十八歳だから、お歳は…18+40という足し算が頭に浮かんだことでしょう。このように情報が入ると、ある程度の年齢以上なら、頭脳はかなりひとりでに反応して、働くようになっています。 情報というと、台風情報、大学入試情報などと生活に役立つ事柄をさして使われますが、人間がもつ感覚器を通して、受け取る外界の事柄も生理学的に「情報」と言います。感覚器は聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚の五つです。私たちはいろんな「情報」を絶え間なく受け取りながら生きているのです。 一般的にいう情報も生理学的な情報も、今は満ちあふれています。情報は多いとよさそうですが、そうでもありません。 耳から入る情報を使って、簡単な実験してみましょう。これからいくつかの足し算を連続して言いますので、答を出していってください。いきますよ。18+40、30+44、23+16、35+21…………いかがでしたか。最初のうちはすらすら答が出せていても、途中からできなくなり、さらに聞こえてくると嫌になってきたのではないでしょうか。大半の方はそうだと思います。これは耳から入る情報が多すぎて、頭脳がそれを処理できなくなってきたのです。 確かに私達は情報を得ることで世界を広げていきます。しかし、それが過剰になると、私達に拒否反応が起きてきます。まず、何をいっているのか理解できなくなります。イライラしたり、頭やお腹が痛くなったりという身体の不調が出てくることもあります。 私が小さい頃は、テレビも電話も家にはありませんでした。遊んで、宿題して、寝るだけでした。土佐女子に入って、中一から高一まで卓球部に入っていました。 卓球部の指導の先生は、成績が下がったら部活はやめろ、という先生でしたので、部員一同勉学との両立を掲げて、頑張っていました。私の一日も卓球しているか、勉強しているかでした。両親は忙しく、私の生活に口出しはなく、本日話をしている「情報」の量は非常に少ない環境での毎日でした。 今は大変ですね、テレビ、携帯電話、パソコン、雑誌、CDなどなど。 私には二人の子供がいますが、うえの子が一歳になった頃、テレビをつけると注目して見るようになりました。その時、その情報の多さに、この子の頭はおかしくなってしまう!と思いました。今まで、全てにわたり、情報は少なくのんびりと成長してきたのですから。その何千倍もの、目から、耳からの情報です。しばらくはテレビは見せないようにしました。子供は私と絵本を見たり、童謡を聴いたり、歌ったり、家中を探索したり、散歩をしたりして過ごしました。これが一歳には丁度いいと思いました。好奇心で身体を動かす、そこから得る情報はその子の知恵になっていったと思います。こんな積み重ねが成長に一番いいと思うのです。自然に増えていく、無理のない情報量です。みなさんにも、その年齢に応じた情報量でいくのがよいと思います。 さて、みなさんは帰宅してから寝るまで、何時間ぐらいあるでしょう? この間にテレビを見たり、携帯電話を使ったり、夕食、入浴もありますね。例えば夜遅くなって、明日持っていかなくてはいけない道具を思い出しました。家にはありません。お店もしまっています。家族を巻き込んで、叱られながらやっとの思いで準備する。こういうことは、余計な時間をとるし、さんざん小言を言われて気分は最悪です。 こういうことにならないように、日頃からテレビやメールのやりとりを減らして、時間的に頭脳に空白の、働く余地を持たせておくのです。提出物の準備やレポートの提出、宿題の期限など忘れなくなるでしょう。親、先生から小言を言われなくなります。小言はいやな思いをする、いらない「情報」なんです。いい子ちゃんぶるのではありません。その方が自分にとってずっと得なのです。メールのやり取りは、私もたまにあります。結構時間をとられるし、やっていることの邪魔をされます。あす話せばいいことはあすにしませんか?お互いに、時間と頭脳のゆとりが増やせます。 もう一つ例をお聞きください。三歳の子が幼稚園に入園しました。お母さんはこの子が帰ってくると、毎日「お友達できた?」と聞きました。この子は、お友達できたということはどういうことかしら、わかりません。毎日お母さんに聞かれても、答えられないで日が過ぎました。ある日おばあちゃんに、この子まだお友達ができないようなのとお母さんが言っているのを聞きました。おばあちゃんが悲しそうに自分を見て、早くお友達ができるといいねと言いました。その子はなにがなんだか、おもしろくありません。 そして、気分が不安定になり、幼稚園でついにトラブルをおこすことになってしまいます。 子供にとって、心地よい言葉はその子を落ち着かせ、育みます。質の良い情報となります。十三歳から十八歳のみなさんにとっても言えることだと思います。 友達といい関係でいる、学校生活を円滑にする、家庭で時間に追われないように、やるべきことをしていく。 このために自分を取り巻く情報を少なくする、情報の質もよくするようにやってみて下さい。勉強や部活に忙しくても、心にはゆとりが生まれます。そのゆとりの中から自分のやりたいことがきっと見えてきます。将来に向けてのやりたいことでも、今、興味がわいてやりたいことでも。自分の心に浮かんだことを大切にして下さい。それは危険ではないか、ひとを傷つけたりしないかをよく考えて、よしっと思ったら実行して下さい。そして、実行するために必要な情報を、この時こそ!集めるのです。 ◇体を支える食と運動 今、大人の世界では大変なことになっています。「メタボリックシンドローム」です。メタボリックシンドロームかは腹囲の測定と血液検査で判断しますが、原因は油と砂糖のとりすぎと運動不足です。若い頃からの食生活が積み重なって起こってきますので、みなさんに食のお話をしたいのです。 現在はさまざまな食材があふれています。日本にいながら、世界の国々の料理も食べられます。テレビではおいしいよ、おいしいよと食品が紹介されることしきりです。何を選び、どんな食べ方、料理法を選べばよいのでしょう。 好きなもの、便利で手軽なものが選ばれやすいですが、私は和食と野菜たっぷりをおすすめします。和食は油も砂糖もとりすぎません。野菜の食べる量は、その人の両手を受け皿にしていっぱい載るくらいが、その人の一日量です。両手を受け皿にしてみて下さい。入れていってみましょう。トマトを一個、ナスを一個、キャベツを八分の一、かぼちゃを三ブロック、あと、ししとうが二、三個載りますか。こんなぐあいです。果物も一日に、片手のこぶし大食べて下さい。温州みかんなら二個、種なしぶどうならひと房。野菜も果物も旬の新鮮なものを選んで下さい。なるだけ冷凍のものではなく。 私は中学三年生の時、たおれました。ビタミン不足でした。朝はごはんと味噌汁と簡単なおかず、昼はうどんか菓子パン、夜だけちゃんとした(?)定食風の食事でした。激しい運動部だったのに、栄養が足りなかったのは今思えば明らかです。運動部でないとしても、色々な栄養素がいります。家庭科で栄養のことは習いますよね。食堂で食べるときはも栄養を考えて、油の多いものばかりにならず、不足しがちの野菜を選んで食べるようにして下さい。 みなさんはお料理をしますか。料理実習が家庭科でありますでしょう?ぜひお料理をして下さい。中学一年生から、ご飯が炊けて、お味噌汁がつくれるようになって下さい。 最後に、いつでも簡単にできる体操をご紹介しましょう。 両腕を耳につけるようにして上に伸ばします。このとき手は開いています。手の平で空を突き上げるような感じです。次に肘を曲げて両腕は肩まで下ろします。手は握ります。この二つの動作を交互に繰り返します。次に足。踵をつけてつま先は四十五度くらい開きます。それで踵を軽く上げます。そのまま膝を曲げ伸ばしします。 手の動作と足の動作を組み合わせます。手が伸びているときは膝も伸びている、手が下りているときには膝も曲がっているようにします。常に踵は上がっている状態です。 では、やってみましょう。イチ、ニ、イチ、ニ………意外に難しいでしょう。これを朝昼晩、二十回ずつやってみてください。腹筋や腰が鍛えられますし、バランス感覚も養われます。この体操は『天突き体操』といって、九州の外科の先生が考案されました。考案者の先生は、一度に百回もなさるそうですよ。 今日はみなさんに「いきいき生きよう」という題でお話いたしました。 身の回りの情報を減らしてみると、自分のやりたいことやアイデアが頭に浮かんできます。情報の多さで思考過程はかき乱され、情報の質の悪さで心がむしばまれます。 食べ物に関心を持って下さい。身体によいもの、必要なものを知って、選んで食べて下さい。そうして、健康で楽しい毎日を送って下さい。
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