図書室へのいざない
○図書館活動○
〈概要〉本校図書室は中校舎一階に位置し、 面積は一六九・三平方メートルである。 蔵書数は三一、 五二七冊 (平成十七年九月五日現在)、 雑誌一七誌、 新聞二紙、 年間予算二六二万円で、 平成十四年度からはコンピュータの導入により管理運営している。 平日の開館時間は八時から十七時までであり、 司書が常駐し貸出やレファレンス業務に専念している。 図書委員 (各クラス二名) の活動も軌道に乗り、 主に新聞の切り抜き、 展示、 カウンター当番を精力的にこなしている。 図書室は、 生徒・教職員の読書活動や教科の学習を支援すると同時に情報処理の場となっており、 まさに本校教育活動の要といえる。
〈活動〉年間活動計画では、 種々の活動が予定されているが、 特筆すべき活動例は以下のとおりである。
第一に、 「この夏おすすめ土佐女子一○○選」 の発行がある。 これは生徒・保護者・卒業生・教職員からの推薦図書の一覧であり、 発行を心待ちしている関係者も多く、 保護者や卒業生への図書の貸出も行っている。
第二に、 昨年末から今年にかけて 「『ひと夏の少年兵』 おばあちゃんのひとり語り」 の朗読会 (放送部員・図書委員による) を開催し盛況であった。 作者の松吉千津子氏を招聘し、 戦争を追体験することにより、 平和の尊さを実感したことは貴重な体験であった。
第三に、 図書室は各種コンクールの作品応募の窓口となっている。 昨年度は読書感想文コンクールで学校優良校 (中学校) に選ばれ、 読書感想画コンクールにおいても学校表彰 (高等学校) を受けた。 両コンクールともに最優秀受賞者を出したことは大きな成果であった。 また、 「作品募集一覧表」 (国語科・資料は図書室で閲覧できる) によって応募し受賞する生徒も数多い。 本年度の新聞感想文コンクール (高知新聞社主催) には、 一○九名の生徒が応募している。
読書感想文を課すと大半の生徒は嫌な顔をする。 読むこと以上に書くことが苦手なのだ。 感想文を書くことにより、 作者のエネルギーを享受して新しいものを求めてゆけるような読書生活を送ってほしいものである。
〈貸出冊数〉平成十六年度本校の一人当たりの貸出冊数は三・五冊 (全国平均読書冊数二・六冊) であり、 全国平均を上回っている。 本年度一学期の貸出冊数一位は九五冊 (中一)、 二位は八四冊 (高二) である。 (以上 「図書便り」 による。) 貸出冊数上位の生徒は図書室で本を借りる習慣が身についており、 読書が生活の一部になっている。 反対に、 貸出冊数ゼロの生徒もいる。
青少年の活字離れが指摘されて久しいが、 確かに本を読む生徒と読まない生徒の二極化が起きている。 生徒たちは勉強、 クラブ活動、 塾、 習い事と多忙極まりない。 その上、 テレビ、 ビデオ、 インターネット、 メール、 音楽などに興味関心が向かう。 そうした中で読書の時間が削り取られたと考えられる。
〈読書傾向〉最近の読書傾向としては、 映画化・テレビドラマ化された作品、 商業ベースに乗った作品、 作者が生徒と同世代の作品に人気が集まった。 いわゆる名作といわれるものは後退し、 古典ばなれが急速に進んでいる。 例えば、 「世界の中心で、 愛をさけぶ」 「ハリー・ポッター」 シリーズ、 「蹴りたい背中」 「蛇にピアス」 「Itと呼ばれた子」 シリーズなどが共感を呼んだ。 このうち、 「ハリー・ポッター」 は夢やスリルがあり痛快で面白い。 他の作品は、 青春 (恋愛) や生き方を問うテーマが生徒の趣向と一致したと思われる。 また、 一気に読んでしまえるという手軽さがある。 その他、 「青空のむこう」 「いま、 会いにゆきます」 「解夏」 「冬のソナタ」 などがよく読まれている。 「だから、 あなたも生きぬいて」 や 「五体不満足」 も根強い人気を保っている。 夏休みの宿題の読書感想文についても、 これらの作品が目立ち、 琴線に触れた感動が伝わってくる。
図書室では、 生徒の求めに応じて以上の本を積極的に購入し、 手に取りやすい場所に配架している。
〈図書購入〉本年度購入した図書の特色としては、 国語科と連携し、 音読・暗誦に適した書籍を複本購入した点が挙げられる。 例えば、 「声に出して読みたい日本語」 シリーズ、
「ちびまる子ちゃんの音読暗誦教室」 シリーズ、 「声に出して味わう日本の名短歌一○○選」 「声に出して味わう日本の名俳句一○○選」 など、 授業に活用できる図書資料の充実を図った点である。
本校国語科では、 書くことと同時に音読・暗誦に力を入れている。 中高生の時期に心と体にたたき込んだ名文は、 一生の財産となって、 やがて一人歩きを始めるに違いない。 時と場所に応じて、 心に響く詩句を口ずさむことができるような豊かな人生であってほしいと願っている。
〈課題〉今後の課題として、 第一点は如何にして生徒を図書室に引き寄せるかという点である。 そのためには、 生徒にとって快適で魅力的な図書室でなければならない。 第二点はメディアセンター化の推進である。 この点については広いスペースが必要であり、 校舎改築の際に検討しなければならない。 第三点は公立図書館や他の学校図書館との連携である。 関係機関との連携は読書の幅を広げ、 円滑な調べ学習のために不可欠である。
〈生徒のみなさんへ〉 「本は人なり」 という言葉がある。 図書室は単なる本の倉庫ではない。 幾多の人生が詰まっている。 全世界が集結している。 実に、 知恵と心の宝庫である。 私たちは読書によって、 未体験の、 さまざまな知識を身につけることができ、 人間の幅を広げることができる。 本は私たちにとって最高の教師なのだ。 読書には、 特にそれが必要な時期がある。 その一つが、 心身ともに成長する青春時代だ。 この時期に出会った一冊の本によって、 人生行路が決定づけられる場合がある。 かつて、 作家井上ひさし氏は 「騙されたと思って本を読みなさい」 と、 わが子を諭したという。 生徒のみなさんも騙されたと思って図書室に足を運んでごらんなさい。 この人と共に歩んでいこうと思うほどの伴侶に出会うかもしれない。
○図書室散策○
図書室利用者の顔ぶれは殆ど決まっている。 朝八時の開館と同時に数名の生徒が駆け寄ってくる。 「おはようございます」 と元気な声。 中学生の二人はマンガコーナーへ、 高校生は自学自習のためにと、 それぞれの目的とする場所に落ち着く。 図書室の朝の一コマだ。 中学生が手にしたマンガは、 「対訳サザエさん」 と 「ブラックジャックによろしく」 であった。 図書室にマンガを置くのはどうかという意見がある。 しかし、 本校図書室には全集物のマンガや歴史・古典マンガを置いている。 最近では 「ドラゴン桜」 が爆発的な人気を呼んでいる。 以前、 「動物のお医者さん」 ブームにより獣医学科志願者が増加したように、 「ドラゴン桜」 に啓発され受験勉強に励む生徒が増えるかもしれない。 歴史や古典マンガは、 時代の推移をつかみ短時間で概略を知る便利さがある。 マンガを契機に文学作品に興味を示す生徒が出てくるかもしれない。
来室の目的が新聞のテレビ番組欄であったり、 今日の運勢欄であったりする生徒がいる。 友達との待ち合わせ場所である場合もある。 私はそれでよいと思っている。 こうした生徒が図書室の雰囲気に慣れ親しみ、 やがて書架に手を伸ばすことになるかもしれないという期待感がある。 読書予備軍は意外に多く、 生徒と本のパイプ役を果たす努力が図書室に求められている。
最近、 絵本が静かなブームを呼んでいる。 そこには、 忙中閑ありの風が見受けられる。 放課後、 絵本を眺めている高校生がいる。 特に文字を追っているわけではなさそうである。 絵を楽しんでいる。 否、 懐かしんでいると言った方が適切であるかもしれない。 一方、 中学生のグループは 「孫悟空」 を開いて少々騒がしい。 幼稚園の頃の話をしているらしく、 当時の友だちや先生の名前が聞こえてくる。 純真無垢な気持ちでいられた幼児期を追想しているのであろうか。 思春期の説明し難い心の葛藤を絵本でもって癒しているような気がしてならない。
私はこうした生徒と出会う度に、 心のオアシスとしての図書室を、 一人ひとりを大切にした教育をと思う昨今である。